奈良酒ラボでは、様々な活動を通じてお酒のプラスの側面にスポットを当て、その魅力をお伝えすることで、飲食文化に貢献していきたいと考えています。飲食文化の魅力に関する情報の収集及び発信のみならず、若年層の方に適正飲酒を推奨する「酒育プログラム」、お酒好きの健常者の方に推奨する「3.5合運動」などを通じ、健全な飲酒文化を育んでまいります。人の命をつなぐ「食」、人の営みに潤いを与える「酒」。食愛・酒愛の精神を大切にし、活動してまいります。
人の営みとともにある酒文化
お酒には日本の稲作文化と共に育まれてきた長い歴史があります。古代より米等を発酵させて酒は醸され、豊穣を祈り神に供え、神と共にあるために飲み、人の生活に根差してきたのです。日本では、室町後期頃から飲食文化が芽生えるに伴い、酒は宗教的な扱いだけでなくなり、江戸時代後半には庶民の楽しみとしても広まっていきました。そして今では、素晴らしい文化として様々な食と共にお酒を楽しむ事ができるようになったのです。
お酒のマイナスイメージと飲酒を取り巻く環境の変化
その一方、飽食に起因する問題も存在します。特にお酒に関しては、その特徴でもある致酔性が時として問題となり、残念なことに社会を騒がす場面があります。お酒を飲むと太る、血液検査の数値が悪くなると言われ、過剰摂取による依存症や健康障害も問題となっています。飲酒運転や未成年飲酒など法規に反することは絶対に許されないことなのですが、メディアなどでの取り扱われ方がこのようなマイナスの側面に集中してしまうこともあり、お酒のイメージは悪くなる一方ではないかと心配になるのです。
また、余暇や価値観の多様化の中、若年層の酒離れも進んでいます。お酒がコミュニケーションツールとして社会人のマストアイテムだったのは過去の事となり、飲み会に誘うとアルハラと言われ、労務問題に発展する場面もあるようです。一気飲みの強要などはさすがに見かけなくなりましたが、お酌しないといけない、注がれたら飲まなければいけない、酒がなくなったら気を使って注文をしないといけないなど、抵抗を感じる方も少なからずいらっしゃるでしょう。また、飲酒人口が高齢化、核家族化の浸透により親戚との行事で宴席のマナーを学ぶ機会もなく、ハレの機会に飲酒する特別感も薄れ、残念ながらお酒の消費量は随分減ってしまっています。
昭和にお酒を飲み始めた方は、正しい知識が不十分な中で、根性や気合を試すように酒を飲まされた経験があると思います。年度初めは歓迎会などで急性アル中で搬送されるのが風物詩のような時代でした。急性アル中で命を落とす方もあり、大きい問題だったと思います。そのような環境で、多くの方は飲酒に対する第一印象はあまりよくなかったのではないでしょうか。
実際のところ私も、現在思っているお酒の良さにたどり着いたのは30歳近くになってからです。だからこそ、これからお酒を飲み始める皆さんには、お酒の魅力を楽しむ前に、その致酔性や体に対する悪影響に関し正しい知識を持ったうえでお酒と接し、長く楽しんで頂きたいと思います。そして、80歳を超えてもお元気で「酒は百薬の長」であることを示していただければ嬉しく思います。
プロフィール
勤務中の経験に加え、日本酒に対する研鑽も積み、酒類全般を広く横断する知見を強みとする。現在は販売からは一歩下がり、飲食文化の情報発信を通じてお酒をこよなく愛する人を増やす活動を行っています。
【認定資格等】
・一般社団法人日本フードアナリスト協会認定フードアナリスト1級、認定講師
・一般社団法人日本ソムリエ協会認定ソムリエ
・一般社団法人日本ホテルバーメンズ協会(HBA)京滋奈支部賛助会員
・日本ビール文化研究会 ビアけん2級